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Blog posts December 2020

家茂は本当に嬉しそうに笑い

家茂は本当に嬉しそうに笑い、そして小さな拳を握りしめた。「負けてはいられぬな。思うがままに動いては申し訳が立たぬ。…会ってみたいものじゃ」お目見えの身分のない近藤たちが家茂に会う事はないだろう。しかし素直なその気持ちに、紫音はいつか会わせてみたいと思った。近藤はまた号泣するんだろうな、と思えば、無意識に笑みがこぼれる。「紫音、礼を言う。そなたのおかげで余はまた一つ変われたように思う」そう言う家茂は、確かに初めて見た時とは違い、しゃんと背筋を伸ばしていた。最初は、不安と無力感に押し潰されそうになっていたから。その成長を見た紫音は、今だから言える、知っておいて欲しい事を口にした。「幕府なんていらな…

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聞こえてきた笑い声に

聞こえてきた笑い声に、栄太郎が抱き着いてきた原田を追いやって紫音に駆け寄った。「楓!!」「何!?目ぇ覚めたのかっ!?」駆け寄ってきた皆に、紫音は柔らかく微笑んだ。皆さん…生きてる…死の情景が頭から消える事はなかったけれど、今生きてる事に心から安堵する。こんな気持ちは始めてで、紫音はただ笑う事しか出来なかった。「どいてよ三馬鹿。楓、ほら、喉かわいてるでしょ」栄太郎が水を用意して、吸いさしを口元に持っていく。欲しかった水分に、紫音はごくごくと喉を鳴らした。「…ふぅ…………

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聞こえてきた笑い声に

聞こえてきた笑い声に、栄太郎が抱き着いてきた原田を追いやって紫音に駆け寄った。「楓!!」「何!?目ぇ覚めたのかっ!?」駆け寄ってきた皆に、紫音は柔らかく微笑んだ。皆さん…生きてる…死の情景が頭から消える事はなかったけれど、今生きてる事に心から安堵する。こんな気持ちは始めてで、紫音はただ笑う事しか出来なかった。「どいてよ三馬鹿。楓、ほら、喉かわいてるでしょ」栄太郎が水を用意して、吸いさしを口元に持っていく。欲しかった水分に、紫音はごくごくと喉を鳴らした。「…ふぅ…………

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辺りを見渡すと、遠くの方でスマホを耳に当てたまま私に手を振る甲斐の姿が見えた

辺りを見渡すと、遠くの方でスマホを耳に当てたまま私に手を振る甲斐の姿が見えた。「来てくれてたんだ……」「今、キモいと思っただろ。どんだけ過保護なんだって思っただろ。言っとくけど、俺は……」「そんなこと思ってない。……甲斐の顔見たら、ホッとして力抜けちゃったよ」札幌駅の喫茶店で父に会うことは甲斐に伝えていた。わざわざ心配して駆けつけてくれるなんて……どれだけ私は甲斐に想われているのだろう。大切にされていることが嬉しくて、胸がいっぱいになる。「どうだった?会うの、六年振りくらいだったんだろ?」「うん……お父さん、相変わらず私には甘かった」「そりゃ娘に会えたら、親父さんも嬉しいだろうな」話しながら、…

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