Menu

e

家茂は本当に嬉しそうに笑い

家茂は本当に嬉しそうに笑い、そして小さな拳を握りしめた。「負けてはいられぬな。思うがままに動いては申し訳が立たぬ。…会ってみたいものじゃ」お目見えの身分のない近藤たちが家茂に会う事はないだろう。しかし素直なその気持ちに、紫音はいつか会わせてみたいと思った。近藤はまた号泣するんだろうな、と思えば、無意識に笑みがこぼれる。「紫音、礼を言う。そなたのおかげで余はまた一つ変われたように思う」そう言う家茂は、確かに初めて見た時とは違い、しゃんと背筋を伸ばしていた。最初は、不安と無力感に押し潰されそうになっていたから。その成長を見た紫音は、今だから言える、知っておいて欲しい事を口にした。「幕府なんていらない、Yaz避孕藥者たちもこの国を誠に思っての事です。それだけはわかって下さいね」紫音の言葉に、しばし考えるように目を閉じた家茂は、小さく呟いた。「そうじゃな、きっと…そうなのじゃろうな」小さくても、しっかりと。紫音はこの将軍ならば変えられるかもしれないと思った。新撰組の行く末を知った事で、うっすらとわかってしまった未来を。いや、そう願わずにはいられなかった。散々人の命を絶ってきた自分に言えた事ではないが、出来るなら無駄な血を流して欲しくない。少なくとも、自分の知る人たちだけは少しお仕置きしてみました。やっぱり多少痛みを伴わないとわからないですよね、人間は。………何ですか。一応私も人間の仲間ですよ。「おめぇ…何してやがんだ?」「おはようございます。何って…鍛練してたんですけど」「そうじゃねぇ!その手は何だってんだ!?」「あぁコレですか?あまりにも言う事きかないので少しきつめに「ぶぁっかやろぉ!!」朝っぱらから松本の怒号が響く。それもその筈。紫音の右手が痣で腫れ上がっていたからだ。傷口が完全に塞がったとみるや、本格的な鍛練を始めた紫音だったが、それは自分を痛めつける程のもの。その中でも思うように動かない手にいらついてしまったのだ。「痛いじゃないですか」「うるせぇ!おら、みせろぃ!!」紫音に思いきり拳骨を落とした後、松本は紫音の腕を取り、井戸の水をかけた。ぐちぐちと説教を垂れながら、松本はどこから出したのか、薬草の汁を塗りたくり、乱暴に包帯を巻く。紫音はまた動かしづらくなった腕に心底嫌そうな表情をした。「取るんじゃねぇぞ!?」「はいはい、わかりましたよ」適当に返事してるのが目に見えてわかり、松本は大きなため息をわざとらしく吐く。ボリボリと首のあたりをかきながら、真剣な目で紫音を見据えた。「刀持ちてぇんじゃねぇのか?」その問いに、紫音が振り返る。目に映る希望に、呆れたように松本は続けた。「だったら少しは言う事聞きやがれ。お前ぇが今やってる事は、無意味に痛めつけてるだけだ。そんなんじゃ余計な場所まで痛めて、使いモンにならなくなる」「…ではどうすればいいんですか?」「無理に使ったって仕方あるめぇな。そうだな…針仕事しろ」「はい?」「細かい作業がいい訓練になるんだよ。腕を使うのは一日一時にしろ」「…使えるようになりますか?以前よりも、私は強くなりたいんです」「断言はしねぇ。ただ、今みてぇな真似するよりは効果あるだろうよ」騙されたと思ってやってみろ、そう言うと、松本はいなくなった。残された紫音は、ぐるぐるに撒かれた腕を掲げる。前のように刀を持てるようになるなら…何でもやってみよう。決意を新たに、松本のいなくなった方向に向けて、軽く頭を下げるのだった。

「紫音、ちょいと花見に行かねぇか?」「いいですよ。少し目も疲れたところですし」早速縫い物を始めた紫音に、勝が声をかけた。酒の壺を肩にかけて、陽気な勝。鼻歌まで出ているのを見て、紫音は首を傾げた。

 

Go Back

Comment

Blog Search

Comments

There are currently no blog comments.