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「結婚まで考えた彼はいた

「結婚まで考えた彼はいたけど帰って来たという事は上手くいかなかったんですね。久し振りに再会した倫也さんがかっこ良く見えて、アクオソリューションズの副社長だと知った、しかも廉洞の会社と業務提携もしている。これから伸びる会社で伸びている途中と知り、家を調べて豪華なマンションに住んでみたいとでも思いましたか?あ、妻いましたね、妻邪魔ですね?顔見たら地味でした、はい、勝てます、勝ちます。初めての女だし倫也も覚えているだろうな、私っていい女だし、迫れば落ちるよね、でも落ちないな、どうしようかな、そうだ、奥さんに寝ましたって言っちゃおう、だって嘘じゃないし、昔の事だけど、それで出て行ったらそのまま慰めて一緒に暮らしちゃお、倫也ゲット!!……………て感じですかね?簡単に想像出来ちゃいましたね……もう馬鹿丸出しですね。まだ言いたい事あります?倫也さんの方に行った方が早いですよ?倫也さんは相手にしないと思いますけどね。」

 

一気に話して息が苦しかったので、倫子が大きく深呼吸をすると、その間、パクパクしていた口を華江は閉じて黙り込んだ。

 

 

「なん……何なのよ、あなた!性格悪っ…。」

金魚の様にパクパクした後で出た言葉はそれだった。

 

「お互い様です。性格悪いのは…。妊娠中の妻に旦那さんと寝ましたよ、とか言う人に言われたくないです。華江さんの方が最悪です。」

淡々と変わらずに倫子は半ば呆れ声で言い、華江はムキになって返すが続いていた。

 

「本当の事だもの!!」

 

「過去の事ですよね?今の事だって言うなら、倫也さんと愛し合っていて私を追い出したいならどうしてこの前来た時、言わなかったんですか。」

 

「それは絹枝さんが…「いたから、言えない?理由にならないです。寧ろ、愛し合っていて離婚して欲しいなら倫也さんのお義母さんがいる時に話した方が話は早く進みます。それに絹ちゃんに気に入られてる感じ出してましたよね?味方に付けた方が早いですよ?どうして言わなかったんですか?就職とか嘘までついて。言いましょうか?あなたが言ってる事が全部嘘だからです!」

 

ため息を吐き、言葉を被せて言うと、またムキになった答えが返って来る。

 

「違うわよ!寝たもの!」

 

赤い顔で必死に言い訳する子供みたいに倫子には見えた。「でしょうね…随分と昔に。今の倫也さんとそういう関係になりたいならここへ来ても無駄ですよ?もう一度、はっきりと申し上げますね。私は万が一二人がそうなっても簡単に離婚はしません。倫也さんが別れて欲しいと言ってもサインはしません。する時はこのマンションも戴くし、財産も全部貰います。倫也さんには鞄一つ程度で家から出て行って戴きます。これは絶対条件です。それでも良ければどうぞ、試して下さい。」

 

にっこりと微笑んで言うと、ギロリと睨まれた。

 

「倫也が私に靡いてもそんな余裕のある事言ってられるかしらね!倫也の財産は倫也の物なんだから!覚えてなさいよ!!」

 

ソファに置いていた鞄を手に、立ち上がり玄関へ向かい歩き出した華江に倫子が言う。

 

「忘れます。妄想に付き合う時間はないので…。それから不貞行為が分かった時は廉洞家の顧問弁護士からご連絡させて頂きますね?」

 

リビングのドアの前で華江の足がピタリと止まり、ゆっくりと振り返る。

 

「廉洞家の…何で廉洞家の顧問弁護士からなの?」

その顔は死人みたいに青褪めていた。

 

「あ、私、結婚前から司さんと知り合いで奥様の由香里さんとも結婚前からお友達なんです。結婚式の時に顧問弁護士を紹介されて、何かあった時は相談する様に言われてまして…倫也さんモテるのに鈍感なんで念の為にって。本気で全財産戴いて、相手からも慰謝料600万は取る覚悟です。倫也さんのご両親の了承も頂いているので、その時はよろしくお願いしますね?」

 

笑顔で言い切る。

 

嘘はない。

倫也が誰を相手に浮気をしても、離婚となれば身一つで追い出すと倫也にも、新藤のご両親にも話してある。

 

華江は無言のまま、信じられない顔を向けていたが、フラリと顔を玄関方向に向けると、真っ青な顔でヨロヨロと出て行った。

 

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