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「ここにはより良い明日を作るために

「ここにはより良い明日を作るために、今日を研鑽する者が山のように居る。そしてここにいる者達はすべからく過去に努力を積み重ねて来た者達だ。国の宝は彼等なのだから、去る者よりもこういった若者に厚く報いて欲しいと願う」

 

 劉協の方に向き直り目を見る。暫し沈黙していると、列の左右から中央前列に進み出て、並んで膝をついて段上を見詰める。姜維、鐙芝、李項が最前列、後ろに多数が連なっている。

 

「陛下にお願い申し奉ります。どうか、島大将軍に最大の恩恵を!」

 

 大勢がそれに唱和して、三度言葉が繰り返された。https://www.daytrading.com/moomoo 一度受けて後に返還してもいいか、今はこいつらの行動を容れてやるべきなんだろうな。目を閉じて大きく息を吸い込んだよ。

 

 劉協が笑みを浮かべて片手をあげて皆に応える。過去に曹操の配下が屈辱的な内容を強要してきた時とは違った請願を受けて目が爛々としている。

 

「こうも多くに願われては叶えぬわけにもゆかぬな」

 

「甘んじて受け入れよう、だが俺の願いも蔑ろにはしてくれるなよ」

 

 これで上手く行くならいいさ、俺は全てを受け入れるよ。

 

「その前に確認すべきことがある。漢で暮らしてはくれるのだな?」

 

 まあそいつについては目が覚めるまではここに居る必要があるからな。いつどうなるかは俺には解らん。

 

「ああ、運命が尽きるまで俺はここに在る」

 

 命ではなく運命とは言ったものだ。ふと目が覚めて塹壕の中という線もあるぞ、長い夢も終わってみれば数分だったなんてザラだ。

 

「官職は全て返還されているが、中県の侯であることに変わりはない。劉氏の妻を持っているので附馬、位階の確約である儀同三司もだ」

 

 そうだな、中県は持ったままだ、だから陸司馬が未だに俺についている。といってもこいつも宿衛将軍大将軍司馬から衛将軍別部司馬都亭侯になってる、どうも司馬職を求めたらしい。俺の呼び方にあわせたんだとしたら迷惑をかけたと謝るべきだな。

 

「多くの者が中県から禄を食むことになった、龍の税収が少なくなっている。これを補填する為に近隣三県を中県に加えるものとする、名も改めるとしよう」

 

「今でも充分以上だが、隣県に街が伸びているのは事実。管理もし辛いだろうし、統合は必要かも知れんな」

 

 河までが中県だったところに、またいで街が出来て官吏が困っているという報告は実際にあった。どこで区切れば良いか、結構な事案だったそうだ。これが恩恵だっていうなら納得だ、飲める内容ってやつだよ。恐らくはこの時代こいつらの感覚でも結構な結果だって感じてるはずだ。

 

「それともう一つある」

 

「領地も、地位も、資産も目一杯だ、俺はもう何も要らんよ」

 

 正直なところ与えられても迷惑だ。繁栄を求めてるわけじゃないからな。我がままだといってくれて構わんよ。

 

「何も与えはせんよ」

 

「与えない? すると?」

 

 任じるわけでもなければ、与えるわけでもないとなればなんだ。俺に無関係ってならここでは何も言わんだろうし、関係あるならどっちかだろう。

 

「皆に公言する、しかと聞き届けよ。漢に連なる全ての者に遍く伝えよ、龍は朕の友だ! 朕が皇帝である時も、そうでない時も、龍が味方である時も、そうでない時も、いついかなる時でも友誼を忘れはしない!」

 

 …………そうきたか、だが悪くない気分だ。

 

「兄弟! 南蛮で暮らすのも良いぞ、暫くどうだ」

 

 肩の荷も下りたし、それもいいだろう。むしろそれが出来る時を待っていたってところだよ。ふと視界の右端で人が歩み寄って来るのが見えた。

 

「龍よ、良くぞここまで働いてくれた。礼を言わせてもらう」

 

「孔明先生。長いようで短い時間だったかも知れません」

 

 身一つで転がっていたのを将軍にされて、南北を行き来してか。その間もずっと首都で全てを取り仕切って来た、偉大な人物だよ。やはり諸葛亮の名は伊達じゃない。

 

「ありがとう、友のお陰で私の今がある、漢の今がある。感謝してもしきれない程だ」

 

 羽扇で顔を隠して涙を流す、長かったんだろうな本当に。人生の殆どを費やした結果がこれで良かったよ。

 

 うっ……これは、目の前が白くなって意識が遠のいていく。お題の達成か、どうやらお別れが来たようだな。俺も大満足だよ、三国志の時代、確かに多くの英傑がそれぞれの主張を以て命をぶつけあっていた。

 心配して駆け寄ってきている声が遠くで聞こえる気がする、最後の最後に嬉しい気持ちになれて本当に幸せだ。

 

三国志、長々と書きなぐりましたが完結です!

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