戦の火ぶたがきられると、会津藩の兵卒たちはソッコーで逃げだすらしい、ということもつけくわえておいた。
じつは、戦端がひらかれると同時に撤退命令がだされることになっている。
第三台場が本陣になるのであるが、第一と第二の台場は、あっという間に敵に奪われてしまうことになっているからである。
さらにもう一つ。https://sitenum.com/debsy.com https://www.website.show/url-details/WCP-wy-XLB https://www.hkttf.com/viewthread.php?tid=113644&extra=&frombbs=1 これもまた、副長に伝えてあることがある。
「大鳥さん。明日は、あんたが指揮をとっちゃくれまいか?」
軍議の席上、とはいえ、戦国武将みたいに床几があるわけではなく、岩の上に座ってとか樹にもたれてとか、各自思い思いの姿勢でいるのだが、兎に角、副長が大鳥に依頼した。
「案じてくれなくてもいい。こちらで策は練ってある。それをあんたの口から発してくれればいいんだ。今朝はああいったが、此度の戦は会津にとって正念場だ。ちゃんとした であり幕臣であるあんたが指揮をとったほうが、会津藩兵もやりやすかろう」
その会津藩兵は、火ぶたがきられればソッコーで逃げだすので、だれが指揮をとろうと関係ないのではあるが……。
ゆえに、このまま副長が指揮をとってもいいのである。
が、この戦いの指揮官は、あくまでも大鳥である。
『大鳥が、指揮をとった』
ウィキには、そのように記載されている。土方歳三、つまり副長にいたっては、所在が定かではないと記載されている。
こういう大局では、できるだけ伝えられてることに忠実でありたい。
なかなか芸が細かいよなって、自分でも感心してしまう。
「あー、土方君。気を遣ってもらって悪いんだけどね。ぼくはどうも「負け男」のようなんだ。ゆえに……」
「大鳥さん。あんた、誠にかわっているな。それに、らしくない。だが、家格や地位にこだわっているほかのくそったれどもにくらべれば、よほどまともだ」
副長は、そのように笑いながらいった。
周囲は暗い。火を炊くわけにはいかないからである。物音にも気をつけなければならない。ゆえに、戦国時代のように、馬たちにはわらじをはかせ、ハミを噛ませてある。もちろん、も軍靴から草鞋にはき替え、移動している。
「土方君、きみに気に入ってもらえてうれしいよ」
大鳥は、副長の世辞を真にうけたようである。
副長は、それを苦笑でかわした。
それから、俊春メイドの地図をひろげ、配置を指示していった。
翌朝、史実どおり濃霧になった。
そして、史実どおりの展開になった。
火ぶたがきられてから、敵のテンションは超絶マックスで、大砲をガンガン撃ちまくってきた。
第一と第二の台場には、それぞれ大砲を一門ずつ設置している。砲手には、二、三度撃っただけですぐに退くよう指示してある。ゆえに、第一と第二の台場はソッコーで落とされた。
単純に『戦った』という、既成事実をつくりたいのである。が、こちらのヨミちがいがおこった。っていうか、おれの記憶ちがいか、あるいは伝えられている内容がちがっているのかはわからない。兎に角、敵の大砲の数や機動力が想像の斜め上をいっていたのである。
これでは、敗走する背中をとらえられ、確実に喰いつかれて殺られてしまう。
撤退しながら戦うのは、まえに進みながら戦うことより難しい。の、「金ケ崎の退き口」などがいい例である。
「副長」
俊春が敵のいる方角からもどってきた。
かれは、第一と第二の台場、それと峠下に配置されていた伝習隊と新撰組の一部を逃すため、単身で敵を攪乱してまわっているのである。
さすがは、異世界転生で「傭兵」をやっていただけのことはある。
かれは、「豊玉」にちかづいていった。それに気がついた副長は、「豊玉」からさっとおりた。
うーん……。
いまの副長の下馬のし方は、現代風にいえば「HON〇A」や「KAWAS〇KI」といった大型バイクから颯爽とおりるようなものだったのか?
はやい話が、副長はカッコつけて馬からおり立ったつもりにちがいない。
残念なことに、大型バイクがサラブレッドだとすれば、在来馬である「豊玉」や「宗匠」は、さしづめ原チャリのようなものであろう。
いくらカッコつけておりようとも、原チャリだったらなぁ……。
一瞬、『誠』のステッカーをべったりはりつけているヘルメットをかぶり、原チャリで道路のはしっこをトロトロと走行している副長が脳裏に浮かんでしまった。
く、草すぎる。
「宗匠」の鼻面をなでながら、思わずぷっとふいてしまった。
って、また副長ににらまれてしまった。