をつかってでも、わたしをのしてしまうでしょう」
沈黙、ふたたび。
いまのだと、副長を讃えているのか、非難しているのか判断できない。
「ですが、
「鬼の副長」は、それでいいのです。それで・・・」
沈黙がつづく。
やはり、俊冬の意図していることや真意がよめない。
「おまちください」
「うるせぇっ!このくそ寒いのに、まってられるかっ」
「いえ、すぐに、すぐにとりつぎますゆえ。おまちを」
そのとき、急に廊下が騒がしくなった。
複数人の足音が、ちかづいてくる。
相棒が立ち上がり、声のするほうをじっとみつめる。
は・・・。せっかちな御仁ですな」
俊春の囁きに、俊冬が苦笑したのと、人影が躍り込んできたのが同時である。
「おうっ、土方っ!京でのさばってたのが、江戸に逃げかえってきたってか?」
web上の写真のまんまである。
やはり、写真が残っているとすごい。
現代のように、修正アプリやソフトなら、「?」ってなことになるかもしれない。が、は、ありのままの姿を写し、残す。」、である。
歴史そのものに興味がなかろうと、幕末史が苦手であろうと、坂本龍馬とおなじくらい有名な人物なので、人生に一度はきくであろう名前。とともに、三舟と呼ばれている。
なにより、一番の功績は、江戸城の無血開城であろう。駿府城で西郷隆盛と会談し、それを成し遂げたことは、あまりにも有名である。
そして、役立たず隊士三浦啓之助の伯父である。
三浦の父佐久間象山の義兄にあたるのが、この勝というわけ。
「相棒っ、」
小声で相棒に指示をだす。
相棒は、指示通り縁側からはなれ、伏せの姿勢をとる。
、犬に陰嚢をかまれて死にそうになり、以降、犬が苦手なのである。
勝は、そこではじめてうしろを向き、庭に犬がいることをしったようである。一瞬、体がこわばったが、相棒が伏せたまま動かぬと判断したのであろう。また、副長へとを戻す。
「ええ、勝先生。見事な負けっぷりでした」
さすがの副長も、勝が突如あらわれ度肝を抜かれたか?
苦笑とともに返す。
じゃぁねぇな、ええ、土方よ?」
「これからかと」
「ふんっ、あいかわらずだな」
勝は、室内にいる全員をひととおり睥睨する。
それから、どかりと胡坐をかく。
「おい、ぼーっと突っ立ってないで、熱燗でももってきてくれ」
宿の番頭や小者が、まだ廊下に立っている。
勝が、その人たちに大声で依頼する。
「お手数ですが、お願いします」
廊下側に座す俊冬が小声でいうと、かれらは一礼して去ってゆく。
「おうっ、そういやぁ甥っ子は、どうした?」
勝は、忘れてたわけじゃないが、きくタイミングを逃したので、いまやっときいてみます、的な口調で尋ねる。
「三浦は、隊務の途中で脱走いたしました。ちょうど、戦がはじまるまえです。わざと、追っ手をだしませんでした。みつかれば、隊規にしたがい・・・」
副長は、きれいな掌で自分の頸を斬る仕種をする。
真実は、追い払ったのである。だが、それを告げる必要はない。
「ほう・・・。こっちに、なんの音沙汰もねぇ。えっ、なにかい?殊勝にも、親父の仇を討とうってか?」
勝の鋭いと、副長のそれとがあう。
そのとき、永倉がちいさく笑う。
めっちゃ、ちっちゃい・・・。それが、正直な感想である。
「ふんっ!だが、まいりましたって
勝は、子どもの
残された写真そのまんまの小男は、どこからどうみても「
「なんと、このでやっていたのは、女遊びと飲酒です。刀を抜くどころか、木刀を握ったこともない・・・」
副長もまた、ちいさく笑う。
「その三浦の仇とやらは、永倉が手傷を負わせ、俊春がのしました。噂では、肥後に戻ったということです。あなたの甥御は、あなたを頼って、に置いていましたが、三浦が「それはありますまい。あなたの甥御ゆえ、